凍てついた契約

光ある所に影はある。
一見平和そうな街の裏では、今日も誰かが平和のために巨悪と戦っている、かもしれない。

日がすっかり暮れた頃、子供の歓声が消え、誰もいなくなった公園のベンチに彼女はいた。
青と白を基調としたブレザー服の様な姿をした少女。
白河璃華(Shirakawa Rika)、14歳。
近くの中学校に通う彼女が、なぜこの時間帯に公園にいるのか。

璃華「今日の魔女は強かったねー。ボクももっと特訓しないときついかな。」
彼女は一人のはずなのに、どうやら話し相手がいるらしい。

ここで読者には彼女の使い魔(?)らしき白い小さな生き物が見えると仮定しよう。
あくまで仮定だ。
本当にいるかどうかは著作k げふんげふん の観点からよく分からないことにしておく。
そいつをQBと名付けようではないか。

QB「でも、君の魔法少女としての能力は日に日に上がってきてるよ。このままのペースで戦闘を繰り返して行けばきっと優秀な魔法少女になれるさ。」
璃華「へへっ、ありがとう、QB」
QB「璃華は氷の魔法を使えるから、今日みたいに魔法を攻撃だけじゃなくて、防御に使ったり、補助的に使ったりするのもいいかもしれないね。特に氷結系の魔法で敵の動きを止めてしまうのも有効かもしれないよ。」
璃華「あー、そうだね。ふふっ、じゃ今度試してみようかな。」

とまぁこんな感じである。

彼女たち「魔法少女」は各地に出現する「魔女」と呼ばれる存在と日夜戦い続ける少女である。
この魔女は、通常、人間には知覚できないし、人間と魔女がお互いに干渉することもできないが、人間世界の因果に干渉することで様々な災いを引き起こすとされている。
その魔女と戦い、消滅させることができるのがこのQBに選ばれた魔法少女というわけだ。
QBも人間の知覚できない存在であり、彼(?)と契約することで晴れて魔法少女となることができる。
璃華もその魔法少女の一人である。

が、しかし、魔法少女になったからと言って現世の束縛から解放されるかというと、そうでもなく、日々の生活、中学生として学校に通いつつも、魔女退治をしなければならないというなかなかハードなのが魔法少女の日常である。

璃華「あー!門限っ!やばいっ!」

彼女の家は門限の縛りがきついらしい。
魔女の出現は時間を選んでくれないというのが魔法少女泣かせか。

が、今日は彼女にとって満足できる戦いができたので枕を高くして眠れそうである。

彼女には分かれて暮らす大学生の兄がいるのだが、その話はまた別の機会にするとしよう。

………………
…………
……

謎の少女「あなたはそれで、なんの疑いもなくこれまで戦って来たわけなの?」
璃華「そ、そんなことは……ないよ……」

休日の昼下がり、突如出現した魔女を倒し、結界から抜け出した璃華を待っていたのは、その魔女と一緒に戦ってくれた魔法少女だった。

謎の少女「そう?私にはあなたが奴に唆されるまま、この世界を救って欲しい、そういう抽象的な餌に釣られているようにしか見えないわ」
璃華「だからそれは……ボクが戦うことでみんなが……」
謎の少女「私たち魔法少女のからくりはさっき話した通り。私たち魔法少女は絶望を溜め込んでいずれ災厄を撒き散らす魔女となる。その魔法少女のなれの果てを狩って生き続けるのが魔法少女の使命。」
璃華「う……あ……」
謎の少女「その重圧に耐えきれないなら魔法少女なんてやめて穏やかに暮らすことね。」
璃華「それでも……私は……お兄ちゃんと……」
謎の少女「……ただし、魔法少女が元通りの暮らしができるとは思わないことね。それじゃ、忠告はしたから私は行くわ。」
璃華「ま、待って……っ!」

とっさの判断か、璃華は先日覚えた対象の動きを封じる氷結魔法を放った。
が……

謎の少女「あら、さっきの戦いを見てなかったのかしら。そんな魔法は私には通じないわよ。」

その瞬間、彼女に放たれた氷が全て融解してしまった。

謎の少女「尤も……」

次の瞬間には璃華の身体が中を舞っていた。

謎の少女「魔法を使わずともこれくらいのことはできるけど。」

璃華はそのまま近くの池に落ちた。
いや、落とされたのか。

謎の少女「また会いましょう。今度は本気で戦うことになるかもしれないけど……」

そういうと謎の少女が展開していた結界が消え、彼女は街の喧騒の中に消えて行った。

………………
…………
……

体中びしょ濡れのまま家路に就いた璃華。
幸い、今日は両親が外出中だったので特に何事もなく終わりそうだが……

シャワーを浴びて、服を着替えて、髪にドライヤーを掛けた彼女は、そのままベッドの上で布団に包まった。
そこにタイミングを見計らったかのように現れるQB。

QB「いやー、今日の魔法少女、凄かったね。まさかここまで実力を付けた君が手も足も出なかったとは。」
璃華「……」
QB「それにしても彼女はいったい何者だろう。僕たちと契約している魔法少女じゃないし、まさかこちらの世界には僕たちみたいな存在が他にもいるのかな。」
璃華「……嘘吐き」
QB「何がだい?」
璃華「だって!魔女はボクたちの敵だって!だからやっつけなきゃいけないって……」
QB「そうだよ、魔女は僕たちの敵だ。」
璃華「そうじゃないよっ!ボクが今までやっつけてきた魔女が同じ魔法少女だったなんて……ボク……」
QB「そうだね、魔女は魔法少女のなれの果てだ。」
璃華「どうしてっ!どうしてそのことを教えてくれなかったの?」
QB「聞かれなかったからさ。」
璃華「……っ!」
QB「それとも、その情報が君たちが魔女と戦う上で重要なものだったのかい?」
璃華「……もう、ボク……戦えないよ……」
QB「……僕と契約したときのことを覚えているかな。魔法少女となって戦う代わりに、どんな願いでも叶えてあげる、と」
璃華「……」
QB「それはね、魔法少女が希望に満ち溢れた存在、つまり高ポテンシャルの存在に対して、魔女は絶望が蓄積した負のポテンシャルを持つ存在なんだ。僕たちは、その魔法少女から魔女へ急降下する時に発生する”感情-絶望-“によるエネルギーを変換して、地球だけじゃない、この宇宙を破滅から救うための活動をしているんだ。」
璃華「……分からないよっ!そんなことのために……私たちの命を弄んで……」
QB「どうしてそんな少数の人間のことを気にするんだい?君たち地球人の1人の命とこの宇宙の運命と、とても天秤に掛けられないはずなんだけどね。やっぱり君たち人間はよく分からないよ。」
璃華「もういい。もう……戦わない……戦いたくない……」

QB「やれやれ、いまは契約できる魔法少女も、自由に動いてもらえる魔法少女も、君ぐらいしかいないし、そもそも君の秘めている能力はこれまでの魔法少女の中でも最高ランクだ。だから君に魔女退治をやってもらわないといけないんだけど……」
璃華「知らないっ……知らないんだから……」
QB「こういうことは僕たちとしては不本意なんだけどね」

そういうとQBは自身の頭から伸びている器官(耳か?)を璃華の身体に当てた。
その瞬間、璃華の身体とQBが淡い光を放ち出した。

璃華「QB!?なにを……あっ……身体が動か……」
その場に倒れ込む璃華。

QB(僕の声が聞こえているかな?といってもそろそろ身体の自由どころか思考の自由も奪われると思うけど)
璃華(QB……なにを……)
QB(簡単なことさ。君が自分の意思で魔法少女を続けないのであれば僕たちが強制的にそうさせるだけさ)
璃華(まさか……)
QB(今のこの方法、これは最終手段なんだけどね、僕の命を全て捧げることで契約者の身体と同化することができる。君たちの言葉では「乗っ取る」という表現が正しいかな)
璃華(QBやめてっ!)
QB(それでも、君たち人間が抱く「感情」というモノは僕たちには終ぞ理解することができなかったよ。だから、本来なら同化すれば対象は全て僕たちと同じ存在になるんだけど、魔法少女と同化するのは初めてだからよく分からないや。)
璃華(あっ……あっ……)
QB(これは僕の推測だけどね、人間と僕たちのハイブリット、僕たちが感情を持つことができるかもね)
璃華(……っ!)
QB(でも、「人格」っていうのかな、支配格は僕になるか、君になるか、よく分からない。もしかしたら新しい人格が生まれるかもね)
璃華(お兄……ちゃん……た……す……け……て…………)
QB(そろそろ同化が完了するね。君と過ごした時間は楽しかったよ。また次の世界で会えるといいね)

と、QBが語りかけ終わった瞬間、彼女の身体が大きく揺れ、強い光を放った。
光が収束し終える頃、そこには先ほどいた少女……が成長した姿と形容した方がいいだろうか、裸の女性がいた。
しかし、中学生の少女とは思えない身体つき……身長も伸び、胸が大きくなり、腰もくびれた大人の女性がいた。

璃華「ふ……ふふふふ……」
邪悪な笑みを浮かべながら―いや、邪悪と言うべきか、感情の籠った感情のない笑い、そういった方が正しいだろう―ゆっくりと立ち上がった。

璃華「いままで私は何をしてきたんだろうな……」
そういうと彼女の身体に服が、いや、魔法少女の服装が装着された。
その装いは、かつて青と白を基調としたブレザー服姿の魔法少女の服ではなく、それを発展させたかのような、ロングコートでも言うべき服装だろうか、より一層冷たさが引き立つような服装となった。

璃華「ふふっ、宇宙を救う……上等よ。なにも恐れることはない。この力を使って魔法少女を生み出し、魔女に変換させる、たったそれだけのことじゃないの。今の私の力ならば全ての魔女を葬ることができる……」

あどけなさの残っていたかつての少女の面影はなく、ただ冷徹な笑みが零れる。

璃華「……まずはあの正体不明の魔法少女をおびき出すことにしましょう。」

そういうと、そのまま喧騒の街へと繰り出して行った。

璃華「贄は多い方がいいわね」

………………
…………
……

少女「はぁ……はぁ……」

この街の日が当たる部分が陽とすれば、必ず陰となる部分が存在する。
例えば、地下だったり、路地裏だったりと。
今、一人の魔法少女が路地裏を走って逃げていた。

少女「どうしてっ!どうしてなの……」

少女と相対するのは、紺色の魔法少女服で固めた女性。

いや、魔法少女ではない。
「魔女」と形容した方がいいかもしれない。

少女「さっきは私を助けてくれたのに、なんで……」
璃華「助けた?あなたを魔法少女にしてあげたことは結果的にあなたを助けたことになる。それは事実。」
少女「だから……」
璃華「そう、それによってあなたは希望の魔法少女になった」
少女「……?」
璃華「そしてこれからあなたは絶望の魔女になるのよ」
少女「ひっ……」

璃華はそのまま彼女たちがいる空間を凍結させた。
そう、彼女が魔法少女だった頃に編み出した対象の動きを封じる補助魔法。
それの発展形である。

璃華「さぁ、泣き喚きなさい。あなたの逃れられない運命を呪いなさい。あなたは、ここで死ぬの。私の手に掛かって。」
少女「い、いやーーーーーーー!!!!!」

少女が悲鳴を上げると同時に、少女の周りに黒い霧が発生し、同時に竜巻のような渦が少女を中心として発生した。
そう、希望の魔法少女は絶望の魔女となるのだ。
ヒト……かつてはヒトだったもの。
魔法少女、いや魔女か。
そう、彼女の手に掛かって。

璃華「ふふっ、今日の子はどれくらい楽しませてくれるかしら」
そういうと自身も結界らしき術を解放し、そのまま魔女が展開する結界の中に入って行った。

数分後、何事もなかったかのように結界が消滅し、中から彼女が現れた。
氷の魔法使いだった彼女は、その人間性、足枷が消滅することにより全てのポテンシャルを解放、氷による攻撃・防御・補助とどれをとっても最大級の魔法を展開できるようになり、事実上彼女に敵う魔女はいなくなった。

璃華「さあ、私はここにいるわよ。早く来なさいな。そして始めましょう、お互い魔法少女を越えた魔女としての戦いを……!」

彼女の凍てついた心を融かす者は果たして現れるのだろうか。



と、こんな時間に投稿したのはこれから出かける予定があるというわけで、バタバタしてしまいました。
ちょっと今月は時間がなさそうなので色塗りはせずに線画で力尽きてしまいましたが、いずれは塗りの技術を身に付けてリベンジしたいです。

今回のSSの元ネタは魔法少女まどか☆マギカです。
実際、完全オリジナルにするか、まどマギから設定を頂いた二次創作にするか、結構悩んだんですが、結局二次創作という形にしました。
もし、まどマギを視聴されていない方は、是非ともご覧くださいな。

あと、前回のアンケート結果を反映して「洗脳」「改造」「寄生」が混ざりあったよく分からない展開になっていますが、私もよく分かりません(爆
というわけで、お題の件はこれでなにとぞ……よろしくお願いしまっす!


最後オリジナルキャラクターの設定など

白河璃華

Shirakawa Rika
14歳、中学生の魔法使い
主に氷系の魔法を得意とする。
お兄ちゃん大好き、らしい。結構なことです。
ちなみに兄の名前は萩(Shu)。

名前の由来は雪を意味する「六花(rikka)」ととある人物の名前を組み合わせたもの。
魔法少女のデザインはTwitterの診断メーカーの結果

魔法少女緋風は、白と青が基調のブレザー風コスチュームに身を包み、ホウキを手に怪人と闘うゾ! 決め台詞は「しあわせゲットだよ☆」 http://shindanmaker.com/26763

に忠実にしたつもりですが……決め台詞はどうにかならなかったのか。

氷魂の魔女:璃華

璃華が地球外知的生命体と同化、融合することで生まれ変わった存在。
能力が向上したというよりは、元々秘めていた能力と思考が全て解放された状態。
彼女が操る氷結系の魔法は抜群の威力・性能を誇る。
自身の思考の方向が地球外知的生命体の手によって修正を加えられている状態で、当面は魔女狩りのために活動する。


2011/12/21追記:
線画を塗り終わりましたのでイラストをカラー版に差し替えました。

凍てついた契約」への1件のフィードバック

  1. Jodie

    …If it weren't for black comedians, nobody could make fun of black pe.o&eolqupt;Hahahaha! If this is what you took away from the sketch, they're making fun of people like you!

    返信

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